素顔のマリィ
そこに広がっていたのは、風とわたし。
青く塗り固められたキャンパスには、駆け抜けるわたしの姿が描かれいた。
少なくとも、わたしにはそう見えたのだ。
顔の輪郭も、身体つきさえ明確でない、まるで風をまとったようなその人物は、わたし、だ。
いったい誰がこの絵を描いたのか?
わたしはそれが知りたかった。
絵の中に名前を探した。
でも、恐らく書きかけのその絵には、まだサインらしきものは書かれていなかった。
キャンパスの裏も確かめてみた。
そうだ、美術部員の名簿をみれば……
と、わたしが超現実的な思考を巡らせている時、美術室の扉が開いた。
「マリィ?」
聞き慣れない男の声が、懐かしいトーンでわたしの名を呼んだ。
まさか……