素顔のマリィ
「ルカなの?」
そこに立っていたのは、栗色の巻き毛をした背の高い男子。
わたしの記憶の中の彼は、小さな少年だ。
見た目も声もまるで違う。
僅かに残る面影は、そのクリクリと動く好奇心旺盛な眼差しだけだった。
「久しぶりだね、マリィ。
と言っても、僕はもう随分前から見ていたけど」
「な、なんでルカがここに居るの?」
「一昨年、日本に戻って来たんだ」
「えっ?」
「僕は1年の時からずっとこの学校に居たよ」
8クラスあるこの高校は、学年だけで300人以上の生徒が居る。
一度も言葉を交わすことがない同級生がいても不思議じゃない。
ルカはアメリカに居る、と思い込んでいたわたしには、身近にルカの姿を探す理由がなかった。
だいたい、この二年、林先輩しか眼中に無かったし。
「僕はずっと、マリィをみてた」
ま、待って!
も、もしかして、もしかしてこの絵は流加が描いたものなの?
「風と走るマリィをみてた」
わたしの直感は的中した。