素顔のマリィ

ある国語の授業中で、流加は一心不乱に机に絵を描いていた。

見ると、机の上から丁度半分くらいまでが、黒い点で覆いつくされている。

わたしが見てる傍から、その点はどんどん繋がって長く長く伸びていった。

よく見ると、点だと思っていたものには、脚が沢山ついていた。

「ルカ、これなに?」

わたしは耐え切れなくなって流加に聞いた。

「アリ」

流加の机の上の蟻達は、何やら大きな芋虫みたいな物を運んだり、細長い米粒みたいなものを運んだり、兎に角忙しそうに歩いていた。

「ねぇ、ルカ、これはなに?」

わたしは蟻の運ぶ米粒みたいなものを指差した。

「アリの卵。これは蛹。雨が降って巣が壊れて、アリ達は引越しの途中なのさ」

「へぇ〜」

「マリィは見たこと無いの? アリの行列」

正直言って、蟻の行列には興味は無かったけれど。

「見たい?」

と流加に聞かれたわたしは、即座に「みたい」と答えていた。
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