素顔のマリィ

流加は、わたしをモデルにたくさん絵を描いた。

笑うわたし。

怒るわたし。

眠るわたし。

食べるわたし。

走るわたし。

踊るわたし。

歌うわたし。

そして、流加を見つめる熱いわたし。

「マリィ、そんなかしこまっちゃ描けないよ。

マリィ、僕の前では素顔でいて。

僕はマリィのあるがままが描きたいんだ」

流加の言葉はわたしを安心させてくれた。

次第に自覚する、流加への気持。

流加に抱いていた、憧れや期待、懐かしさや悲しさは、全て彼に対する愛情からくるものだったのだ。

流加と一緒にいると落ち着いたし。

流加と一緒にいると穏やかに眠れた。

流加と一緒にいると何を食べても美味しかった。

流加と一緒にいれば、世界はどこまでも開かれた楽園だった。

光輝く未来がそこにはあった。

流加がいれば何でもできそうな錯覚に陥った。

流加がいるから生きていていることが楽しかった。
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