素顔のマリィ
かおりに誘われて参加した親睦会は、想像通りに面白くも可笑しくもないものだったけど。
彼女と友達になれたことが、わたしの生活に大きなプラスとなったのは確かだ。
かおりはわたしをクラスのラインに招待してくれた。
お陰で細々とした連絡事項に乗り遅れることも無くなったし。
見た目云々は別として、他の同級生にも話せば通じる奴だと認識されたようだ。
わたしの日常は、徐々に形をなし、そのくくりの中でわたしは静かに生息していた。
そうしたある日、夏休みを前に、わたしにバイトの誘いがきた。
かおりの知り合い、詳しく言うと彼女の兄の友人が経営するカフェバーで、開店前のキッチンの仕込みをするというアルバイトだ。
本当はかおりが入る筈だったのだけれど、家庭教師のアルバイトが決まってしまい、時間的に難しくなったのだ。
「マリちゃん、無理言ってごめんね」
「こっちもバイト探す手間が省けたし」
「ラルクの大谷さん、カッコいいし。
仕込みっていっても、本格的なものじゃないから。
料理の苦手なわたしでもできるって太鼓判押されてたし、大丈夫」
そうかおりに頼まれて、わたしは開店前のカフェバー「ラルク」に、約束の時間ぴったり4時に足を踏み入れたのだった。