素顔のマリィ


かおりに教わった通り、正面入口横にある通用口にまわり扉に手をかけた。

うん、鍵はかかっていない。

「お邪魔しま〜す」

わたしは挨拶を口にしながら扉を開けた。

「おう」

と、奥から白いTシャツを肩まで捲り、少しクセのある長い髪を後ろで束ねた男性が顔を覗かせた。

彼が、多分オーナーの大谷さん。

なるほど、かおりの言ってた通りのイケメンだった。

シャープな顎のラインに真っ直ぐに通った鼻筋、切れ長の目は少し冷たい印象だ。

「お世話になります。坂井です」

ジーパンの上から真っ赤なカフェエプロンをきりりと締めた彼は、大きな声で挨拶をしたわたしを、上から下へと舐めるように見定めた。

「なるほど、至極まともじゃねぇか」

「って、どういう意味ですかっ?!」

「半田から、緑の髪の奴をよこすって言われて、いったいどんなパンク野郎が来るのかと楽しみにしていたわけよ」

「あぁ、かおりのお兄さんですね」

「そうそう。お前、かおりのダチなんだって?」

「はい、まあ」

「あいつの妹は、ちっこくて、こう、真面目!って感じだろ?」

「ですね。かおりは可愛い良い子ですよ」

「まぁ、お前も、見た目はどうでも中身は同じ穴の狢らしいな」

そう言って、大谷翼は可笑しそうに目を細めたんだ。

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