素顔のマリィ
「マリってさ、いったい俺のことどう思ってんの?」
時折、こうした問いが男の方から発せられることはあった。
「抱いてる時は、イイ声で鳴くし、俺のこと感じてるんだなって思うけど」
「ならいいじゃない」
「大学で会っても知らんぷりだしさ」
「だってわたし達、公認カップルってわけじゃないでしょ」
「俺としては普通に付き合ってるつもりだけど」
部屋でわたしを抱くことしかしない男に、そんなこと言われるとは思ってもみなかった。
「俺のこと、好き? 嫌い?」
後ろから抱きすくめられて、言い淀んだ。
「嫌い、ではないよ、モチロン」
「なんだそれ?」
「ケイスケのことは嫌いじゃないよ。でも、恋愛感情で好きかと聞かれたら、ちょっと違うと思う」
「それって、俺はお前のセフレってこと?」
「貴方がわたしの身体を求めているなら、そういうことかもね」
「なんだソレ」
「だって、貴方がわたしの何を知ってるっていうの?
わたしが何が好きなのか、嫌いなのか。
どんな事で喜びを感じて、笑いたくなるのか」
だいたいね、することしといてその問いは蛇足でしょ。
「わたし帰る」
「スネルなよ。
俺、お前が感じる場所なら、わかるけど」
廻された手に胸を揉みしだかれて、わたしは思わず悲鳴をあげた。
やっぱりケイスケは何もわかってない。