素顔のマリィ
二年の時、旅行部の合宿で、襲われそうになったこともあったっけ。
かおりに誘われて入った旅行部は、年に数回、日本各地の保養地にロッジを借り切って連泊し自然を満喫しようっていう緩いクラブだった。
春は新緑の軽井沢を散策。
夏は伊豆大島でスキューバを初体験。
秋は紅葉狩に那須高原へ。
冬は苗場でスキー。
男女入り混ぜての合宿は規模も大きくて楽しかった。
変に気を使うこともなかったし。
気軽な仲間でワイワイやる感じ。
確かあれは、夏の大島だったかな。
かおりは水と日焼けは苦手だと参加しなかった。
一人でも参加したのは、透明度の高い海とスキューバに興味があったから。
出発間際でキャンセルが出たりで人数調整が難しくなって、男女別れてのコテージ泊の予定が、どうしても人数が合わなくて混合の班ができてしまったのだ。
「わたしは良いよ」
眉を顰める女子の中で、男子と同じコテージを了承したのはわたしと本田祐樹だけだった。
祐樹はちょっと太目の体育会系女子。
困ってる執行部の様子を見ていられなかった二人だった。
まぁ、二段ベッドだし、昼間海で泳げば夜は疲れてぐったり寝るだけだと思ったし。
実際、最初の三日はそうだった。
それが最後の二日、台風接近で海が荒れ、コテージに缶詰になってしまったのだ。
最初は可愛くトランプしたり、カラオケしたりして遊んでいた。
だけどさすがに二日目ともなると、時間を持て余し、いつの間にか飲み会になってしまった。
はっきり言って、わたしは体質的にザルだ。
けど体格の良い祐樹は見かけによらず下戸だった。
無理矢理飲んだ一口で、もどすは泣くはの大騒ぎの末、眠ってしまった。
もう一人の男子、斉藤勝も直ぐに潰れてしまった。