素顔のマリィ
残ったのはわたしと田中健二。
田中は同期でケイスケのダチだった。
「ねぇ、お前って、誰にでもヤラセルってほんと?」
二人きりになった途端、真っ赤になった顔をいやらしく歪ませて、田中がわたしの横へ擦り寄ってきたんだ。
「まさかっ!」
「だって、ケイスケから聞いたぞ」
「ケイスケ?」
「そう長宮啓介。お前の元彼」
「わたし達、付き合ってないよ」
「って、ことはやっぱり本当なんだな」
「なにが?」
「お前とケイスケはセフレだったってこと」
全くケイスケの奴はろくな男じゃない。
わたしに振られた腹いせに、わたしをセフレ扱いにして、おまけにそれを言いふらしていたなんて。
「俺にもやらせろよ」
最悪だ。
「わたし上級者としかお相手しない主義なの」
「俺も結構テクニシャンだぜ、試してみてよ。
なんならセフレに立候補しちゃうよぉ」
肩に手を回し、首筋に唇を這わせ、田中はやる気満々でわたしに纏わりついてきた。
アルコール臭い息が顔にかかる。
うげぇ、気持ち悪っ!
「お断りっ!
だいたい、このブツじゃ話にならないよっ!」
と、わたしは田中の股座を掴んで笑い飛ばしてやったのさ。