素顔のマリィ
まぁ、田中が腕力に物言わせる、俺様タイプでなくて幸いした。
私の嘲笑に、グッ、と押し黙った田中はそのままスルスルとわたしから離れると、酒を煽って潰れてしまった。
気を付けなきゃ、とその時思った。
わたしが双方合意の上、と割り切っていたとしても。
そこに愛が無いなら、付け入る隙があるということなのだ。
あわよくば……、と思う輩が居ないとも限らない。
この田中みたいに。
ねぇ、流加。
貴方はわたしに触れようとは思わなかったの?
どんなに身体を重ねても、流加と共有した時間ほど、わたしの心を熱くすることはできない。
だけど、わたしが追い求めているのは、いつも流加の背中。
走っても走っても追いつかない。
どこまで行けば、この空しさから解き放たれることができるのか?
わたし自身は何処へ行こうとしているのか?
問いかけるも、答えはそう簡単に見つかりそうにない。
だから、それを言い訳に、わたしは自分を甘やかしていた。