素顔のマリィ
流加とわたしは、時折、自転車に乗って出かけもした。
なにを隠そう補助輪の取れたばかりのわたしは、つたない走りで必死で流加についていった。
流加は大きな木をを目印に、野生の勘でどんどんと進んでいく。
風を切って進むその後姿は、鬣をなびかせて走るライオンのようだった。
「ルカ、まってぇ〜」
そう叫ぶと必ず、ルカは止まって振り向いてくれた。
「マリィは女だから仕方ないな」
そう言われるのがとても悔しかったっけ。
朝から夕方まで、流加と過ごした夏休み。
わたしはひと夏で真っ黒に日焼けして、まるで別人のように逞しくなった。
流加はわたしの憧れ。
そして日常の全て。
わたしは流加に夢中だった。