素顔のマリィ

『美術手帳』でも、アニメを扱った特集が組まれていたし。

芸術出版では、最近アニメのセル画を集めた画集も出版されていた。

漫画としての手書きの線画は、昔から一定数の人気があり、定期的に扱いがあったみたいだけど。


「俺の野望は果てしないぞぉ〜、アニメを芸術の域に押し上げるのだぁ〜」


酔ってそう叫ぶ山地は、ちょっと可愛かった。

だけどアニメに関しては、わたしにはその良さが、申し訳ないけどわからない。

どちらかというと、具象的に塗りつぶされた絵の中に、自分なりの物語を見つける方が好きなのだ。

夕焼け空を思わせるピンクに黒い影が飛ぶ光景が目に浮かんだ。

あの美術室で観た、流加の絵だ。

ま、わたしがそれほど入り込んで見るのは流加の描く絵限定なんだけどね。

幼い頃、二人で自転車を走らせて遠出して、川べりから見た夕日。

隣りで騒ぐ山地をよそに、そんなことを想い出してしんみりしてしまった。


「なんだなんだ? たかがアニメって顔してるぞぉ〜」


わたしが急に押し黙ったことに気が着いて、山地が顔を覗きこんできた。

「してない、してない」

慌てて首を横に振るも、真っ赤な顔した山地にはノーもイエスも関係ない。

「おしおきだぁ〜」

山地に首根っこ掴まれて、拳固で頭をグリグリされた。


うぅ〜、こいつ酒癖わりぃ〜

マジに痛いです。
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