素顔のマリィ

あれは夏休み最後の日。

いつもの通りに原っぱに行くと、そこに流加の姿はなかった。

寝坊したのかな? とも思ったが、流加に限ってそれは無いと思った。

もしかしたら流加は、急に自転車に乗って何処かへ行きたくなったのかもしれない。

「マリィには遠出は無理だな」と流加が言っていたのを思い出した。

わたしは置いてきぼりにされたのだ、きっと。

お日様は笑っているのに、わたしは泣きたい気分だった。

こんな良い天気。今日も流加と一緒、楽しい一日になる筈だった。

あの日はただ、置いていかれたことが一日中悔しくて仕方なかったっけ。

でも、次の日からは学校が始まる。

そうすればまた流加に会える。

8歳のわたしはそう信じて疑わなかった。
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