素顔のマリィ

「ねぇねぇ、山地はああいうのはやらないわけ?」

わたしは横目でチラチラ、一緒に並ぶコスプレ少女達をみながら、山地の腕を肘でつついた。

「あぁ、俺はもうコスプレは卒業した」

時計を見ながら、いともあっさり山地が答える。

「えぇ〜、やっぱりやってたんだ?!」

「学際のイベントで、仕方なく、ってのは言い訳か。

実際、やってみると自分が殺されて恥かしくもなくなるし。

みんなに見られる優越感とか?

歩き方まで変わって、キャラクターに成り切れる。

案外楽しいもんだよ」


「ストレス解消、みたいな?」


お前もやって一度みれば? なんて、軽く言ってくれちゃって。

でも、郷に入れば郷に従え。

彼らの気持ちは、その中に飛び込んでみないと本当にはわからないのかもしれない。


「お前、なんだかんだ言って、よくやってるよ」

「えっ?」

「最初は、アニメとかコミックとか、全然感心ありません!って顔してたじゃん」

「まぁ、実際そうだったからね。

でも、食わず嫌いはよくないなって。

これからの世代を読み解く為には、アニメとかコミックがキーワードになると思うし」

「おぉ……、わかってきたねぇ」

わたしの横で山地が嬉しそうに笑っていた。
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