クレームの女王
「これから、パパに逢いに行こう。


久しぶりだから
綺麗にして逢いに行こうね」



そう言って麗華はにっこりと
笑った。


でも祐樹は不思議な顔をしている。


パパは目を閉じて動かなくなり
押し入れの中の仏壇の中に

入っていることは
小さな祐樹にも


なんとなく分かっている。


でもママは今から
パパに逢いに行くと行っている。


そんな祐樹には
お構いなしに

子供用のスーツを
手際よく着せていく麗華。

荒れ果てた部屋の中

美しく着飾る二人。

旅立ちの朝は
どうしようもないくらい


小雨降るどんよりとした1日だった。
< 189 / 206 >

この作品をシェア

pagetop