鈴姫伝説 SideStory 番外編
お姉ちゃんはしばらく目覚めず、千はすずかの傍にいる資格はない、とどこかへと消えてしまった。
やっと、二人が、結ばれたと思ったのに・・・・・・。
そして。
お姉ちゃんは目覚めたとき、記憶と霊力を失ってしまっていた。
そのことをロイルへ報告すると、ロイルは
「・・・・・・そうなのか、早く取り戻せるといいな」
ですって!
さすがにちょっと、カチンときちゃった。
ドン!と机を強くたたき付ける。
「ちょっと、好きな人にその態度なくない?
お姉ちゃんの記憶ないんだよ?
ロイルのこと、忘れちゃったんだよ?
思い出してもらいなよ!
そうすれば、お姉ちゃんも・・・・・・」
──フワリ。
ん?
今、唇に熱い何かが・・・・・・。
目を見開くと、目の前にはロイルのどアップ。
「へ?」
何が起きたのか、さっぱりわかんない。
ちょっと待って、今・・・・・・。
「俺は、もうすずかのことはとっくに諦めている。
あの二人が両想いなのは、目に見えてわかるだろう?」
そら、そうですが。
今、ロイル・・・・・・。
「俺が好きなのは、ゆきなだということが、最近わかった」
へ?
ロイルの言葉が右耳から、左耳へと抜けて行った。
「だから、キスしたんだ」
「へ?ちょっと待っ──んん!」
再び塞がれる私の唇。
身体の力が抜けそう。
初めてのキスに、どうしたらいいか分からず、ただただ彼に身を任せる。
やっと離されたと思ったら、今度は強く抱きしめられた。
待て待て待て待て、心臓爆発するっ!
お姉ちゃんのことについてきたら、告白された?
いやいやいや。
ウソでしょ?
なかなか信じられず、わたわたとしていると、ロイルは不機嫌そうに唸った。
「信じてないな」
「っ、そりゃ、だって信じられる?
お姉ちゃんが好きじゃないの!?」
「さっき言っただろう。
もうすずかのことは諦めていると」
そうだけど・・・・・・。
本当に、私のことを、ロイルが好き?
ロイルの顔を見つめていたら、彼はそっぽを向いた。
ちょ、なんで反らすのよっ!
彼の顔を両手で挟んで、こちらを向かせる。
すると、ロイルは優しく微笑んで。
「俺が好きなのは、ゆきなだ」
そう、呟いた。
その瞬間、何かが、吹き飛んだ。