Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
人混みに強引に入ると、ぎゅうぎゅうに押しつぶされた。
「おああああっ!」
「邪魔だああっ!」
人々の奇声が頭上を飛び交い、視界は遮られてしまう。
怖い……。
パニックに陥った集団がこれほど恐ろしいとは思わなかった。
四方から圧迫され空気が薄く感じられる。
教室から逃げ出す時に武志が止めた意味を、今更ながらに思い出す。
時折、一方から急激に圧力が加わり倒れそうになる。
倒れたら最後、体中を踏みつけられ下手をすれば死んでしまう。
離れないように、先輩の手が痛いぐらいに力を増す。
だけど……。それとは逆にどれだけ強く握ろうとしても、小百合の手がじょじょに離れていってしまう。
私の力では……。
「あ、あおいちゃ──」
「ダメッ!」
必死に掴んでいた指先が解ける。
「い、痛い! たすけ────」
小百合の声が喧噪にかき消されていく。
「小百合っ!」
どうしよう! 小百合が!
私は強引に首だけで振り返った。
しかし、それがまずかった。
こめかみに強烈な痛みが走る。誰かの堅い部位、おそらく肘が当たったのだ。
視界がグラッと揺れ、無数の足が目の前に近づく。
ダメだ、倒れる!
倒れたら────死。
そう思った、次の瞬間。