Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
陸上競技場は楕円形の建物で、周りを囲むように観客席があり、真ん中がグラウンドになっている。
グラウンドは下の階の、廊下を進んだ先にある。安全にヘリコプターが降りられる場所はそこしかない。
私達はなるべく音を立てず、階段を下り廊下を進んだ。
そして、もうすぐでグラウンドが見える。そんな位置まで来た時だった。
後ろから誰かが走ってくる。
遠目に見てもすぐに分かる迷彩服。自衛隊員だ。
でも、自衛隊員は私達には目もくれずに追い越していってしまう。
そのすれ違いざま、トランシーバーに向かって叫んでいた。
「撤退だ! 海藤も峰岸もやられた!」
全員がはっとして息を飲む。
「まずいぞ!」
「急ぎましょう!」
純也と紫音先輩が走り出す。
私も遠ざかっていく自衛隊員を夢中で追いかけた。
パッと視界が開け、広いグラウンドが目に飛び込んでくる。
──あった!
朝、上空を飛んでいた大型のヘリコプターが中央付近に鎮座している。
しかし、見つけると同時に無機質なエンジン音が響きプロペラが回り始める。
「待って!」
「おーい!」
数メートル先を走る2人が大声で呼びかける。
と、先ほどの自衛隊員がヘリに足をかけこちらを振り返った。
気付いた! まだ間に合う。
「──いん──オ──だ」
なにかを叫んでいる。でも、ヘリの音でうまく聞き取れない。
「て──バ──」
分からない。とにかく走るしかない。
そして。
「!?」
ようやくたどり着いたヘリの足下で、やっと聞き取れたその言葉に耳を疑った。