Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~

「そいつは大怪我で歩けねえんだ。頼む! いや──…………お願いします」


敬意とは無縁の純也が深々と頭を下げる。


すると、


「……この娘だけだぞ」


自衛隊員は渋々了承してくれた。


そして、まるでそのやり取りを待っていたかのように、ヘリはその重い機体をゆっくりと持ち上げ始める。


「へっ!? 待って、どうして!」


小百合が咄嗟にこちらに手を伸ばす。


「純也くん、なんで!」


「危ない、おとなしくしてくれ」


隊員が身を乗り出す小百合を、慌てて押さえる。


それを見た純也は、


「足手まといはイヤなんだろ!」


と、ヘリから出た小百合の腫れた足をポンと叩いた。


「うっ!」


小百合は暴れるのをやめた。


それはきっと、ただ痛かっただけじゃなく、純也の気持ちを理解したから。


歯を食いしばり、目からはぽろぽろと涙を零れ落としていく。


「……あおいちゃん、みんな……。さきに行って、待って、ます」


非情にも次第に上昇していくヘリ。





見上げると、そこからしわくちゃの顔を出した小百合が目一杯になにかを言っていた。


「純也くん────」


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