Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~

それでも、悲しんでいる暇はなかった。


心ない死人は、私達の意を汲んでくれることはない。


「来る」


柏木先輩が、警戒を促す。


ヘリの音に釣られたであろうゾンビ達は、あちこちの出入口から姿を現していた。


「逃げましょう」


紫音先輩が頽(くずお)れる純也に呼びかける。


けど、純也は動こうとはしなかった。


「なにしてるの? 立って」


私は腕を持って持ち上げようとしたけど、びくともしない。


「……おれの、せいだ」


「純也?」


「あいつは、俺がヘリに乗せたから……そのせいで」


「ちがう! 純也のせいなんかじゃ──」


「気休め言うな!」


言いながら、私の手を強引に振り払う。


「俺じゃねえか! 俺が無理に行かせなければ、あいつは死────」



バキッ。


純也は、言い終わる前に仰向けに倒れていた。


柏木先輩が純也を殴ったのだ。


「自惚れるな」


「……」


「純也一人で彼女を守っていた訳じゃない」


「みやび、さん……」


「それに……。男なら、まだやるべきことがあるだろ」


そう言って柏木先輩は、私と紫音先輩に目を向け、再び純也に視線を戻した。


「さあ立て。責任を語りたいなら、まずは全うしろ」


先輩が手を差し伸べると、やっと純也が立ち上がった。
そして、シャツの袖で目元を荒々しく拭うと、


「……もう……だれも……、誰も死なせねえ」


ぽつり呟いた。



柏木先輩はなにも言わず、純也の頭をくしゃくしゃっと撫でた。


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