Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~



紫音先輩が必中の矢を放ち、純也は力で弾き飛ばし、柏木先輩が素早く斬る。


これだけ、高校生離れした3人を以てしてもゾンビの囲みを突破することは容易ではなかった。


来た道を戻り、なんとか施設入り口まではたどり着くことができた。が、そこからが問題だった。


あれだけ大勢いた人々の姿はなく、その分ゾンビの数は何倍にも膨れ上がっていた。


みんなゾンビになってしまったのだろうか……。


私が持っていた矢は矢筒ごと紫音先輩に渡したけど、残りは10本もなかったから学校から脱出した方法は使えない。


だから……。



無謀な正面突破。




私達に残された道は、それしかなかった。


「あおい、遅れるな!」


「うん」


息つく暇もなく施設を出る。


後は、ゾンビの中を道路まで、いや、もっと先まで駆け抜けなくてはならない。


夢中で走った。
ゾンビの腕を掻い潜り、シャツを掴まれても振り払った。


何度も転びそうになり持ち堪えた。
アドレナリンが過剰に分泌され、走ることが苦痛ではなくなっていく。


なのに……。


なのに、どうしても突破できない。


気付けば、先頭を行く柏木先輩の速度が見る見る落ちていく。


倒しても倒してもきりがない相手に、スタミナが尽き掛けているのだ。


止まってしまえば、囲まれて一巻の終わり。どこにも逃げ場はない。


どうすれば……。


私達はここで死ぬのだろうか。


【絶望】


そんな言葉が私の頭を過ぎった。

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