Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
そして、それは起こってしまった。
「っ! あぁっ……」
「やめてーっっ!」
思わず声を上げていた。
そんなバカなことがある訳がない。
私は自分の目と耳を疑った。
だって……。
あんなに強くて頭がよくて美人で、誰からも愛される存在。
先輩が。
紫音先輩が……。
すぐ横で短い悲鳴を上げて、頽(くずお)れていく。
ぴったりとくっついたゾンビと共に……。
前方で、柏木先輩が音を立ててゾンビを倒し始める。
状況を瞬時に理解したんだ。引きつけてくれるつもりだ。
それでも何分、いや、何十秒保つか分からない。
私は強引に身体を捻って地面を滑るように急ブレーキをかけ、紫音先輩の元へと走った。
先輩に喰らいついていたゾンビは、すでに純也が倒していた。
「しっかりしてください!」
「あっ……うっ」
先輩は首から血を流し、ブラウスや肩から落ちる綺麗な黒髪までを真っ赤に染めあげていた。