Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「……せんぱい」
私は膝を付き先輩の頭を腿に乗せた。
「……あおい……、さん」
「っ、しゃべらないで」
咄嗟に先輩の首を手で押さえる。
話すと、傷口からドクドクと血が溢れ出してくるのだ。先輩は噛まれてしまったのだ。
「いいの……きいて」
声が掠れ、弱々しい。こんな先輩を誰が想像できただろうか。
私は先輩の口元に耳を近付けた。
「……ご……めん……ね……」
「……」
「わたしが、みんなを……さそったから……こんなことに」
「ち、違います! ──先輩のせいなんかじゃない!」
私が否定すると、先輩は僅かに広角を上げた。
こんなことになったのは誰のせいでもない。
それに、私達は自分自身で決めてここにいるんだ。先輩のせいになんかできる訳がない。
「さいごに、おねがい……できる、たちば、じゃない、けど……おねがい」
ゴボッと口から濃い血液が吐き出される。
「先輩!」
「……みや、び、くん……を…………ま──」
「先輩! 聞こえない! 先輩、いやよ、こんなの……」
紫音先輩は、最後まで言い切らないまま、人形のように動かなくなってしまった。
そして、最悪の悲劇はまだ終わりではなかった。