Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
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──速報です。
昨夜未明、C県浦高市にある国立疾病管理センターで起きた火災により、有害なウイルスが漏れ出た危険性があることを同センターが発表しました。
これにより政府は、浦高市全域を緊急避難区域に指定すると共に、災害対策本部を設置し、自衛隊の派遣を正式に決定致しました。
繰り返します──
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一気に空気が凍りついていく。
そして、何カ所かにかたまってニュースを見たクラス中から、悲鳴と罵声が上がる。
「何なのよ、これ!」
「ふざけんな!」
「もう、いやよこんなの!」
「あのゾンビみてえな化け物は、全部その管理センターのせいなんじゃねえか!」
恐怖からくるやり場のない怒りが教室に充満していく。
有害なウイルス……。
それが原因であのゾンビが生まれたということだろうか。
専門的なことなんて高校生の私達には分からない。
だけど、『緊急避難区域』──学校どころか、浦高市から逃げなくてはいけないということだけは分かった。
「私たち……みんな、それに感染して死んじゃうの?」
ピリピリとした空気に怯えた澪の頬を涙が伝う。
「な、何言ってんだよ。自衛隊だって出動するって言ってたし、大丈夫だよ」
武志が澪を安心させるように抱き寄せた。
……やさしい。
こんな時なのに、──いや、こんな時だからこそ寄り添う二人を少し羨ましく思ってしまう。
このまま死んだら、私はキスどころか彼氏を作ったこともないまま寂しい人生で幕を閉じることになってしまうから。
そんなのは絶対にイヤだな……。