Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
両腕に力を込め、一気に日本刀を突き出した。
グサッ、と刀は右目を貫く。
眼孔からドス黒い血が吹き出し、ゾンビが膝をつく。
「ガッ!」
しかし、まだ、浅い。脳には届いていない。
私を探すように手を振り回している。
心臓が痛いほどに鼓動を早める。
と──。
ゾンビの指が私の髪を絡め取った。
生前は非力であったであろう華奢な女性が、尋常ではない力で髪を引き寄せる。
逆らえない!
「う、うああああっ!」
私はゾンビにのし掛かり、体重を乗せ、刀を更に深く突き刺した。
手に不快な感触が伝わるが、そのまま頭を床に押しつける。
すると、ゾンビはようやく動かなくなった。
一体のゾンビを倒すのに、これほどの体力と精神力を使うとは思わなかった。
みんながいなくなった後も、先輩はずっとこれを続けてきたんだ。
興奮のせいか、そう思うとやるせない気持ちがこみ上げてくる。
私は先輩の元に戻り、ただ静かに眠る先輩を見守った。