Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
ふと、視線を感じてそちらを見やると、純也と幸希がこちらを見つめていた。
「どうかした?」
「あ、いやぁ……あおいは泣いたりしないのかな~と思って……」
と幸希。
「べ、べつに何でもねえよ」
と純也。
変な二人だ。
そう言えばこの二人、他の男子みたいに取り乱したり怒鳴ったりしていない。
武志は元々冷静なタイプだからいいとして、幸希は能天気で純也は純粋におバカだからかな?
──なんて失礼な現実逃避をしていると、すぐに現実に引き戻されてしまった。
「きゃああああああ!」
廊下の奥から上がる悲鳴。
それに続いて、様子を見に行っていたらしい男子が教室に駆け込んでくる。
「来たぞ! 西階段だ!」
瞬間──絶望という沈黙に支配される教室。
心のどこかでゾンビは階段を上ってこないのではないか、誰もがそう思っていたのだ。
だからこそ、文句を言いながらも、あのむごたらしい校庭の惨状を目撃しながらも、逃げずにここに留まっていたのだ。
他の教室に残っている生徒もおそらく同じ考えだろう。
しかし、その希望はたった一声で簡単に打ち砕かれてしまった。
……ここは安全ではない。
あの化け物が、ゾンビがここへやってくるのだ。