Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
まだ、誰か教室に残っているの?
見回して見ると、
「明美、それに小百合」
あまり目立たない大人しいタイプのクラスメイトが二人、教卓の影に隠れるように抱き合ってしゃがんでいた。
先ほどの混乱で突き飛ばされたのか、明美はおでこから、小百合は足から出血をしていた。
「大丈夫?」
「小百合が歩けないの」
「えっ!?」
「倒れた時に誰かに踏まれて、凄く痛いらしくて……」
確かにさっきから説明してるのは明美で、小百合は辛そうにずっと顔をしかめている。
よく見ると、膝がかなり腫れ上がっている。
折れたりしてなきゃいいんだけど……。
「わかった。肩を貸すからつかまって」
私と明美で挟み込んで「せーの」で小百合を立たせると、
「……うっ……ああ……」
痛そうに短い悲鳴を上げる。
でも、耐えてもらうしかない。
ただでさえ出遅れているのだ。ゆっくりしていてはゾンビが来てしまう。
「がんばって」
小百合を励ましながら廊下に出ると、さっきの混乱のせいで何人もの生徒が怪我をしてうずくまっていた。
同じ学年だけに、ほとんどが顔見知りだ。
お腹を苦しそうに押さえたり、大量の鼻血でシャツがべったりな子までいる。
みんな大丈夫だろうか……。
だけど、人の心配なんてしている場合じゃなかった。
「やべーぞっ! 逃げろぉぉおおおおーー!」
西側から、幸希が血相を変えて猛スピードで走ってきたのだ。
その後ろからは……。