Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「明美! 何してるの、はやくそっちを持って!」
「……い、いや」
「なに……いってるの…………明美?」
「死に、たくない……死にたくない死にたくない死にたくない!」
明美は踵を返し、東階段に向けて走りだしてしまった。
「──ア、アッ……アアア」
そして、すぐに背中越しに、人間のものではない呻き声が聞こえてくる。
見上げるとそこには…………太ももを半分噛み千切ぎられ、左腕を失った女子生徒のゾンビの姿があった。
いつのまにか、手を伸ばせば触れられる距離まで迫られていた。
「ひぃっ──んぐぅ」
叫び出しそうな小百合の口を咄嗟に押さえて、目で静かにするように合図する。
「……」
一か八かの賭だった。
一階で山田先生のゾンビに遭遇した時、彼は私の悲鳴に反応していた。
そして、声に引き寄せられるように襲いかかってきた。
もしかしたら、ゾンビは声というか音に反応するのではないか。そう思ったのだ。
その白く濁った眼が、見た目通りうまく機能していないことを祈るしかない。
私は小百合に覆い被さるように丸くなって、息を殺した。