Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「行かないでっ!」
突如、小百合が必死の形相で私の足にしがみついてきた。
「お願い! 置いていかないで!」
「──ち、ちがうの。小百合、落ち着いて」
明美のように、私が一人で逃げてしまうと勘違いしたのか、小百合が取り乱してしまった。
そして案の定、その大きな声ににゾンビが反応してしまう。
右側から男子生徒のゾンビが三体、そして左側からも、せっかくやり過ごした女子生徒のゾンビがユーターンしてこちらに向きを変えてしまった。
このままでは、囲まれてしまう……。
だけど、そう思ったのは一瞬だった。
女子生徒のゾンビの後ろから、猛ダッシュしてくる人影が見えたのだ。
「うおおおおおおっ!」
その人物は、恐怖を振り払うように雄叫びを上げ、手にした箒をゾンビの顔面に叩き込んだ。
「おらあああっーー!」
さらに、走り込んだ勢いをそのままに、女子ゾンビに体当たりをかます。
そして、それがうまい具合に右から来ていたゾンビを巻き込んで一緒に吹っ飛んでいく。
「純也!」
私は助けに来てくれた人物の名前を思わず叫んでいた。
どうせ、これだけ騒いでしまえば今更だ。
「あおい! 生きてっか!」
純也は折れ曲がった箒を投げ捨て、汗だくで駆け寄ってくる。
よっぽど慌ててたのか、肩で息をして。