Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
階段までくると、そこに澪達の姿はなかった。
さらに言うと、純也は階段をそのまま通り過ぎてしまった。
「どこまで行くの?」
少し後方を走りながら、純也の背中に疑問を投げかけると、
「その下はもう無理だ」
と、そのまま走り続ける。
無理、ということは、この階段の下もすでにゾンビがいるのだろうか。
純也は廊下の突き当たりまで来て、ようやく止まった。
そして、小百合を背負ったまま、
「この扉を開けてくれ」
と、鉄製の頑丈な扉を顎で指し示す。
「これって──」
「非常階段だ」
そう、純也の言う通り非常階段の扉だ。だけど、この先は……。
ためらっていると、純也が私のお尻にポスッと軽く蹴りをいれた。
「なっ! なにするのよ!」
「いいから早く開けろ! 武志達はこの先だ」
「でも!」
「ああ、もう!」
業を煮やした純也は、少し前屈みになり片手で小百合を支え、もう一方の手でドアノブを回した。
もわっとした肌にまとわりつく夏の空気と、眩しい日差しに目をしかめる。
この先は校舎の外側に設置された階段、言わば外だ。
しかも、右側にはゾンビだらけの校庭があるのだ。
「ぼさっとしてんな、行くぞ!」
純也はためらいもせずに先行する。
私は結局ここにいる訳にもいかず、その後に続いた。