Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
おそらく校舎からゾンビが来ないようにしているのだろう。
全然気付かなかった……。
「先に逃げて悪かったな……。なんて言うか……ゾンビを目の前で見たら頭が真っ白になっちゃって……。ごめん」
本当に申し訳なさそうに両手を合わせて頭を下げてくる。普段の元気な姿はかけらもない。
「気にしなくていいよ。無事だったし」
幸希の行動は仕方がないと思う。
こんな状況で恐怖や興奮から自分を保つなんてなかなかできることではない。
私だって最初にゾンビを間近で見た時は足が竦んで何もできなかった。
廊下にでた時のクラスメイト達も我先に逃げ出していたし、純也でさえ興奮のあまり澪を突き飛ばしたのだ。
それに明美は、親友の小百合を……。
あれ?
そういえば明美の姿がどこにもない。みんなとは合流しなかったのだろうか。
「……明美は? 明美に会わなかった?」
「あおいと一緒じゃなかったの?」
「誰だそれ」
澪は首を捻っているし、純也に至ってはクラスメイトの名前すらきちんと覚えていないらしい……。
とにかく、ここにいないと言うことは、東階段を下りてしまったのだろうか。
もし、そうだとしたら……。
小百合を見ると、純也の背中に額を預けていてうまく表情が読みとれない。
親友に見捨てられた。その想いでいっぱいなのだろうか……。
それとも、足の痛みで何も考えられないのかな。
さっきみたいに取り乱したりしていないだけ、マシだと思うべきなのだろうか……。
明美と小百合は、こんなことがなければとても仲の良い友達だったはずなのに……。
私は急に寂しさがこみ上げてきて、知らず知らずに澪の手をぎゅっと握りしめていた。
その時だった────。