Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
ガシャン! というガラスの割れる音。
幸希が押さえていた扉が、弾け飛んだ。
ガラス片が飛び散り、外れた扉ごと男子生徒が転がり出てきた。
その男子生徒はすぐにぐったりと動かなくなったが、開け放たれたドアの向こうから、何体ものゾンビが姿を現した。
突然のことに、一息ついていた頭がついていけずに体が固まる。
「────走れっ!」
横にいるはずの純也の声が遠くに聞こえた。
腕が、何かにぐっと引っ張られ体が持ち上がる。
意識から切り離されたように、体が後退りしていく。
けど、私の目は壊された扉に釘付けになっていた。
だって、その下には…………。
みんなでバカ騒ぎする時には必ずその中心にいて、いつも笑顔で、元気で、お調子者で、保健室にいた私を助けに来ようとしてくれた…………幸希が。
何故だろう……頭の中を、昔の記憶がグルグルと回り始めた。
一年の時から同じクラスで、気付いたら仲良くなっていた幸希……。
────文化祭の時なんか、みんな忙しいって、特に男子は冷めた感じで準備を手伝ってくれる人は少なかったけど、
『あいつら、大人になったら絶対後悔するぜ。これぞ青春のイチページだっていうのにな!』
なんて得意げに言っていた。
『なあに、それ~』
『だって、女子とこ~んなに近づいて仲良くなれるチャンスなんて滅多にないだろ! 明美とか小百合なんてさっき初めてしゃべれたんだぜ』
『さっき初めて話したのに、もう下の名前で呼んでるの?』
『えっ? ダメなのか!』
真剣に聞き返してくるから、そこにいたみんなでお腹を抱えて笑った。
────ある日、たまたま一緒になった夕日が綺麗だった帰り道では。
『なあ、あおい……』
『なあに?』
『あおいはさ、男女の友情って信じるか?』
『どうしたの? 急に』
唐突に真面目な顔して言うから、私は最初キョトンとしてたけど、
『……昔はさ、俺もそんなの一切ありえねえって思ってたんだけどさ』
幸希は照れくさそうに、夕日に目を細めたままで話続けた。
『俺、最近思うんだ……。あおいと仲良くなってから、なんかそういうのもありかなっ、てさ……』
恥ずかしかったけど、嬉しかった。
女の子同士では味わえない、むず痒い感覚。
幼なじみの純也とは違う、初めての、本物の〈男友達〉……。
────幸希。