Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「私は市外へ避難しようと思うの」
紫音先輩が話を切り出した。
「ここにいても、助けはこないと思うから」
「でも、あのゾンビの中をどうやって進むんですか? 教室から見たけど学校の外もおそらくは同じですよ」
「そうね。だけど、ここに立てこもるのは3日が限界よ。食料もないし、水も確保できないわ。その間もゾンビは増える一方で、私達は体力も衰弱していく」
「それに浦高市中が混乱しているなら尚更、ここへピンポイントでの救助なんて期待できそうもない、か」
武志が顎に手を当てて、先輩の言葉尻を受け取る。
難しい……。
現時点では、鍵をかけておけば体育館は安全地帯。
万が一助けがくるのであれば、ここで待ちたい。
けど助けがこない場合、ここにいるということは〈ただ死を待つ〉という愚行に他ならない。
正直、私にはどっちが正しいかなんて分からない。
どう行動するかが、みんなの生死を決めることになってしまうから……。
だから、ずるいとは思いながらも武志の結論に従おうと思った。
いつも冷静な武志の決断に。
澪と小百合も同じ考えなのか、紫音先輩と武志をじっと見据えている。
純也は、武志を信頼してるから任せるって感じだろうか。
しばらく考え込んだ後、武志が口を開いた。
「仮に市外に向かうとして、何か方法はあるんですか?」
「私の見立てでは、ゾンビは音に反応するわ。視力はほとんどないんじゃないかしら……。だから、必要なのは近づかれても静かに行動をすること。そして……」
そこまで言うと、紫音先輩は私と純也に視線を向けて、
「戦力」
と妖艶な笑みを浮かべるのだった。