Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
途中まで先輩に同調するような口振りだったが、急に反対意見に変わった。
「あんな大勢のゾンビの中を、それだけの力で進むには無理があります。運良く学校を出られたとしても、体力には限界があります。その先、浦高市内がどうなってるのか想像もできない以上、せめて先輩クラスの実力者が後2人は必要です。でなきゃ最低限の安全確保もできませんよ」
武志は一気に言い切ると、はあ~と息を吐いて肩を落とした。
きっと、自分で言っておきながら希望の芽を摘んだことが悔しいのだろう。
しかし、真っ向から否定された先輩はといえば、
「あら……。あなた賢いのね」
と反論するどころか、「それも立派な戦力ね」と妙に納得していた。
「あなたの言う通り、このままでは戦力不足は否めないはね。でも、私は武器を調達した後、ある人を捜そうとしていたの。その人と市外を目指すつもりだった。その前に偶然あなた達に会ったのよね」
「ある人、ですか?」
「そう。私なんか足下にも及ばないこの学校の最高戦力」
なんだかさっきから軍隊みたいな話になってきてるけど、この際それは置いておいて、私は澪と顔を見合わせてお互い首を捻る。
先輩は弓道の大会で常に全国上位で、見ての通り肝も据わっている。純也は小学校の頃からケンカは負け知らずだし、剣道も相当強い。
その2人より強いって一体……?
考えを巡らせていると意外なところから声が上がった。
「それってまさか!」
いままで口を挟まなかった純也がガバッと立ち上がって、先輩を見据えた。
紫音先輩は、
「そう。いつもなにを考えているのかはよく分からないけど、純也君もよく知っているとにかく強~い人」
と悪戯っぽく微笑んだ。
そして、2人はもったいぶるように妙に納得して、その人物の名前を同時に口にするのだった。
「雅さんか!」
「雅くんよ」