Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~



静まりかえった広い体育館に、取り残されたような重苦しい空気が流れる。


さっきまではたいして感じていなかった密閉された室内のうだるような暑さが、やけに体にまとわりついてきて、湿ったブラウスを肌に張り付かせる。


私達はしばらく唖然とした後、先輩や武志に言われた通りどうすべきなのか考えることにした。


残されたのは、あたかも命に関わる選択を人任せにしようとしていたことを咎められているような、そんな気がしたから……。





「……澪は、ここで助けを待ちたいな」


「わ、わたしも、足が痛いから、できればそうしたいです……」


澪と小百合が本音をぽろっとこぼす。


「私も、これでゾンビを倒せる自信なんてないよ」


渡された弓の弦をピンと弾いてみる。


紫音先輩のものだけあって、通常のものより太い弦が使われている。これは弓の威力が強いことを示す分、それを引く人の力も必要とされることを意味する。


「でも……」


先輩の言うとおり、ここにいても救助はこない気がする。


それは2人にも分かっているらしく。


「逃げるしかないのかな」


「歩けるかな……」


思考は市外へ避難する、というか、そうせざるを得ないと切り替わっていった。


< 35 / 135 >

この作品をシェア

pagetop