Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「ゾンビだ!」
純也が声を上げたのと、紫音先輩がさっと身を退いたのはほぼ同時。
間一髪、無表情なゾンビは先輩の真横でグシャッと地面に激突した。
手足が明後日の方向にねじ曲がっている。
「紫音先輩!」
慌てて駆け寄ろうとすると、
「みんな離れて!」
先輩が鋭く言い放つ。
そして次の瞬間────。
「……うそっ」
…………人が宙を舞った。
高さにして10メートルはある4階から誰かが飛び降りたのだ。
「きゃあっ!」
「危ない!」
澪が私の腕にすがりつく。
けど、私の目はその人物に釘付けになっていた。
だって、その人はアクション映画さながらに、持っていた木刀を三階、二階と窓に突き刺し、落下の勢いを殺して見事に地面に着地してみせたのだ。
しかも、後を追ように落下してきた3体のゾンビを立ち上がりざまに一閃するというおまけつきで。
最後のゾンビを打ち払うと、ボキッと音を立てて木刀がへし折れてしまう。
だけど、その人はさして気にした様子もなく、それを捨てゆっくりと顔を上げた。
それは、白いシャツを血で真っ赤に染めた、黒髪と底の知れない深い瞳の持ち主。
最高戦力と言われる捜していた先輩。
────────柏木雅。その人だった。