Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~



「珍しく派手な登場ね」


「相変わらず人間技じゃないっすね」


紫音先輩はクスッと笑みをこぼして、純也は羨望の眼差しをおくって、他のみんなは呆然として、柏木先輩を迎え入れる。


当の先輩は、「いや、死ぬかと思ったよ」と口では言いながらも表情は眉一つ動かさないポーカーフェイス。


「雅くん。さっそくだけど、一緒に避難しましょう」


「市外へ?」


「ええ。ここにいても助けはこないわ」


「……そうだね」


柏木先輩はあっさりと了承した後、遠い目をして校舎を見上げた。
4階の割れた窓を、生徒のゾンビがふらふらと横切っていく。


教室に戻った先輩の身になにかがあったのだろう……。
私も柏木先輩と階段で別れてから大変だった。
あれから数時間しか経っていないのが嘘みたいだ。


表情からは読みとれないけど、きっと先輩も厳しい現実に直面したのだろう。窓から飛び降りたことを考えれば、容易に想像がつく。







「紫音……」


「なあに?」


「上に残っていたクラスメイトは、…………みんな死んだよ」


「……そう」


一陣の風が吹き抜けて、先輩2人のサラサラな黒髪をさっと撫でていく。


声が小さくて会話はよく聞き取れなかったけど、佇む2人は絵画のようにとても綺麗で、私は場違いだとは分かっていながらも、ただぼんやりと見惚れてしまった。

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