Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「……あのう、センパイ……。本当に大丈夫なんですか」
澪が心配そうに言葉を投げかけると、紫音先輩は返事の代わりに澪の頭をやさしく撫でる。
私達は校舎の裏をまわって、校門が見える位置で息をひそめていた。
正攻法。
即ち、正面から学校を出るのだ。
ここまでは問題なく移動することができた。
だけど、ここからが一番の難所。
隠れる場所がない校舎から校門までのおよそ100メートル。
校庭ほどではないが、死体が転がりゾンビが蠢く道を、気付かれずに進むなんて本当に可能なのだろうか……。
門の向こう側にゾンビの姿は見えないから、出て門を閉じてしまえば一時でもゾンビに追われることはなくなる。多くのゾンビを学校に閉じこめることにもなる。
『隊形(フォーメーション)を整えれば可能なはずよ』
というのが紫音先輩の見解。
隊形は、先頭に柏木先輩、校庭がある左側に純也、ほとんどゾンビのいない右側に私、その間にバッグを持った澪と小百合を背負った武志、最後尾に紫音先輩。
武志は持っていた木刀を柏木先輩に渡して、純也が戦えるように小百合を背負うことになった。
進軍方法は、矢を放って進行方向から少し逸れた位置にいるゾンビを倒す。
倒れる音に付近のゾンビが反応している隙に、息を殺してその横を通り過ぎるというもの。
2人の先輩が確認しあって教えてくれたが、頭を、おそらくは脳を破壊するとゾンビは動かなくなるということだった。