Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
途端に周りにいたゾンビが、こちらへと向きをかえた。
空気が一気に緊張で張りつめていく。
うそ……でしょ……。
「ガ……ア……ア」
呻きを漏らした血塗れの動く死体達が、一斉に四方から襲いかかってきた。
チッと舌打ちをして、純也が武志の足を掴む女子生徒ゾンビの腕と頭に木刀を振り下ろす。
グシャッ、ボキッと鈍い音がして武志の足から手が離れた。
「みんな走って!」
誰かが叫んだ。
すぐに澪と武志が走り出したのが、目の端に映る。
私も、声に体が勝手に反応してその後に続くことができた。
絶望してしまい気を失った時とは違う。生きようとしている。
伸びてきた腕を避けきれず捕まれたけど、強引にそれを振り払い、足が何かを踏んづけたけど
立ち止まらずに、とにかく走った。
すぐに包囲されて身動きが取れなくなってもおかしくない状況なのに、私達は全力に近い速度で走ることが出来ている。
それは、先頭の柏木先輩が走りながら、最小の動きでゾンビをなぎ倒しながら進んでいるから。
それに、校庭から迫り来るゾンビは純也が力で弾き飛ばしている。
その純也に噛みつこうとしたゾンビは、後方から飛んできた矢で頭から吹き飛んでいった。
振り返ることはできないけど、もちろん紫音先輩だ。
みんな、すごい……。
これなら、校門にたどり着ける。