Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
だけど、私は気付いてしまった……。
それが、
「…………あけみ」
3階の廊下で、親友の小百合を見捨てて、一人逃げてしまったクラスメイトの明美だということに。
きっとあの後、東階段を降りてゾンビに襲われたのだ。
私は死にたくはない。
でも、さっきまで普通に小百合と笑い合っていた、生きていたクラスメイトの頭を射抜くなんて……。
時間にしたら、ほんの数秒だったかもしれない。
私はかたまって動けなくなってしまった。
明美の、血管の異様に浮き出た腕が伸びてくる。
その白く濁った瞳には、一体なにが映っているのだろう……。
「射って! ──あおいちゃん、死んじゃダメ!」
「!?」
戸惑う私を救ってくれたのは、そんな悲痛な叫びだった。
それは、うずくまる澪でもなく、紫音先輩のよく通る声でもなく、いつもおとなしくて叫び声
なんかとは誰よりも無縁な存在。
明美の親友、小百合のものだった。
勝手な思いこみだと思う。だけど……、許された気がした。
私は目を瞑り、すでに数十センチの距離に迫っていた明美の顔に向けて矢を放った。
ドスッと骨の砕ける不快音。
頬を濡らす鮮血。
目を開けると、明美は仰向けに倒れていた。