Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
囮って……、さっきだって死ぬところだったのに……。
私はキョトンとする澪を押しのけて先輩の前に進み出ていた。
「待ってください! そんなのダメです!」
「どうして?」
「だって、先輩ばっかりそんなこと……」
「リスクを考えれば、それが一番低いからね」
「それは……」
うまく否定できないでいると、柏木先輩はじっと私を見据えてくる。
まるで信用しろ、と言っているみたいに。
だけどリスクが低いって……、全体ではそうかもしれないけど、柏木先輩個人のリスクは極端に高くなるのに……。
いくら強くても、そんなの何か間違ってる気がする。
「雅くん、本気?」
紫音先輩が止めるでもなく、確認している。
私は助けを求めるように武志に視線を向けた。
けど。
「もうすぐ陽が暮れる。暗くなれば危険が増す以上、今はより早く進める方法をとるしかない。他に策があるなら別だけど」
そう言われてしまえば、反論のしようもない。
だけど、なんだかモヤモヤする。綺麗事かもしれないけど、最初から誰かを囮にして逃げるなんてなんかイヤだ。
私が言い返せずにムスっとしていると、大きな手が肩に触れた。