Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
自然と声が漏れ出る。
先輩は、返事をするように眼鏡のブリッジを指でクイッと押し上げると、無言で私を見据えた。
この時初めて、その少しだけ細められた瞳の奥に、炎が揺らめいているような感情が垣間見えた。
……もしかして、怒ってるの?
「誰だって訊いてんだ、てめえっ!」
「ガキッ! コラッ!」
男達が威嚇するが、先輩はまったく意に介さない。
それどころか、
「もう大丈夫だ」
と、その唇からはやさしく低い声で奏でられていた。
「チッ! こいつらの男か!」
「邪魔するなああぁぁ!」
無視されてさらに興奮した男達が、怒りの形相で先輩に突進していく。
私に跨がっていた男が金属バットを振りあげる。
が、その時には先輩の木刀が男の足を捉えていた。
「うおああっ!」
足元をすくわれ、男は前のめりになって勢いよく顔から床に激突していく。
さらに、その隙に間合いをつめていた軽薄な男が、拳を突き出す。
────危ない!
一瞬、ヒヤッとした。
けど、先輩はそれを半身で難なくかわすと、木刀の柄部分を鳩尾に叩き込んでいた。
「が、はっ……」
軽薄な男が、目を見開いて膝からくずおれていく。
あれは相当痛い……。さっき同じことをやられたばかりだから、ちょっと鳥肌が立ってしまった。