Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「立てるかい?」
「あ、……はい」
先輩が差し伸べてくれた手をしっかりと掴んで、立ち上がると、
「うわあああん! 首舐められたよ~」
澪が私にしがみついてくる。
目を真っ赤に腫らしてはいるけど、この元気なら大丈夫そうだ。
最悪の事態だけは免れた。
「こいつら最低だよ!」
澪が床に這い蹲る男達をキッと睨みつける。
私はこんな人達、もう顔も見たくはない。
「先輩、みんなは──」
「────雅さん! もう限界だ!」
私が言いかけると、壊れた入口から猛ダッシュで純也が走り込んできた。
一瞬、横たわる男達に目を走らせたが、それどころではないらしく、すぐに先輩に向き直る。
「に、逃げよう」
ゼエゼエと全身で息をして、額から大量の汗を滴らせている。
なぜなら、その後ろからは──。
「ガ、ッアアア!」
「……グアッ」
何十体というゾンビの群が、押し寄せてきていたのだ。
ガラスの破片を平気で踏みつけながら店内へと進入してくる。
「他に、出口はっ!」
「こっち!」
私は弓を拾い上げ、急いで裏口へと走った。
店を出る寸前に、私と澪を襲ってきた男達の悲鳴が、微かに耳を掠めていった。