Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「おい、これ着とけ」
綺麗に筋肉のついた上半身をさらけ出して、純也が自分のシャツを私に差し出してくる。
きっと、はだけたブラウスを気にしてくれているんだ。
「でも、寒くないの?」
「お前らとは鍛え方が違うからな」
「あおい、着ておいた方がいいよ~。じゃないとさっきから純也が胸ばっかり見てるよ~」
「えっ!?」
「あっ!? あ、ああ、あほかっ!」
澪がからかうと、純也はちょっと顔を赤くしてシャツを押しつけてそっぽを向いてしまう。
そんな目で見てるとは思わないけど、少し寒かったから遠慮なく羽織らせてもらうことにする。
ゾンビを振り切った後、私達4人は先輩の家へと向かって静かに歩いていた。
もちろん会話もかなり小声だ。
すでに太陽は沈み、辺りはぼんやりと街頭に照らされているだけで、だいぶ暗くなっていた。
いつもの同じ時間帯より暗く感じるのは、民家の明かりがほとんど点いていないせいかもしれない。
大道りのトラックが爆発した後、純也と先輩は武志達とはぐれた私と澪を追いかけてきてくれていたのだ。
ゾンビに追われ喫茶店の裏口に入るところを、先輩が遠目ながら確認していたおかげで助かったのだ。
ガラスを割った音で引き寄せられてくるゾンビを、純也が表で引きつけていてくれたらしい。
柏木先輩も純也も、本当に頼もしい。
2人がいなければ私は何回死んでいたのだろうか……。
そう考えると、言葉のお礼ぐらいじゃ2人には感謝しきれない気がする。
浦高市を出られたら、何か考えよう。