Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~

先導していた柏木先輩が止まった場所は、大きな門の前だった。


中に入ると、手入れのいきとどいた庭が広がり、その奥に純和風の二階建て家屋と平屋が並んでいた。


「うわぁ……武家屋敷みたい」


澪が率直な感想を口にすると、


「すげえだろう、向こうは道場なんだぜ」


来たことがあるらしい純也が、何故か自慢げに平屋を指さす。


「さあ、こっちだ」


先輩が門を閉じて歩き出したので、その後に続いた。


近所にゾンビの群はいなかったし、出入口は鉄の門。
周りはぐるりとブロック塀に囲まれているから、これなら安全に一晩を過ごせるだろう。


先輩が家屋の玄関を開ける。


と。


「澪!」


「あおいちゃん!」


「みんな。無事だったみたいね」


そこには、途中ではぐれた武志達の姿があった。


「武志!」


澪がバックを投げ出して武志の胸に飛び込んでいく。


「怪我はないか」


「うん」


なんだか運命の再会を果たした恋人みたいだ。相変わらず羨ましい……。


「話は中でしましょう」


2人はしばらく抱き合っていたいだろうけど、促されてみんなで中へと入った。

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