Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「ねえ、純也」
「ん?」
「純也って、好きな人いないの?」
「はあっ? 何言ってんだ、こんな時に」
「こんな時だけど、気になっちゃったんだもん。教えてよ、幼なじみでしょ」
「幼なじみは関係ねえ」
「お願い!」
両手を拝むように合わせると、「ったく、やっぱ恐怖でおかしくなってんな」とぶつぶつ言いながら、門の方を凝視する。
確かに、こんなこと聞くのは初めてだ。
しばらくの沈黙。
きっと今、頭の中では、どうするか思案中。
こういう時急かすと「もういい」ってふてくされるのは長年の付き合いで実証済みだから、私はじっと待つ。
薄暗がりに浮かぶ純也の横顔は、たくさん助けてもらったせいか、すごく凛々しく見えて、何故だか心臓が早鐘を打ち始める。
長年見てきたはずなのに、いままで感じることのなかった男らしい純也……。
もし、純也が小百合の気持ちに応えたら……。
ふいに、そんなことが頭を過ぎると、きゅっと胸が締め付けられた気がした。
「──逃げたらな」
純也は、闇を見つめたまま口だけを動かした。
「浦高市から、脱出したら教える」
答えを聞くのが少し怖くなっていた私は、無言で頷いていた。
自分で質問しておいて、勝手に緊張して気まずくなり、
「じゃ、じゃあ、もう行くね。見張りがんばって」
と、早口で言ってその場を後にした。