Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
室町時代から続く、柏木流剣術の家に生まれた先輩は、幼少の頃から剣道の英才教育を受けて育った。
しかも、幸運にも才能に恵まれ、見る見る力をつけていき、中学3年に上がる頃には道場主である父親も圧倒する程の実力者になっていた。
ある日、そんな先輩に師である父親は言った。
「今後一切、対人で本気を出すな」
と。
「最初は、父より強くなってしまった僕への嫉妬だと思った。大人気ないってね。だから、道場で稽古するのを辞めて高校では剣道部に入った」
────でもそれは、大きな間違いだった。
上級生も顧問も相手にならず、大会に出ても5割程度の力で勝ててしまい退屈だった。
そんな時、全国大会の一回戦であたったのが、前年度の全国覇者だった。
「久しぶりに本気で戦えるって興奮したよ」
先輩はそう言って、自嘲ぎみに笑った。
「体格も大きくて、強そうで。10年に一人の天才だって評判だった。だけど……」
開始直後に放った先輩の渾身の突きは、相手を巨体ごと場外まで吹き飛ばしていた。