Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
ショウソウ


バババババババッ────。


大気を震わす轟音が、目覚まし時計の数倍の威力で寝不足の頭を叱咤する。


昨日、家の居間に戻り、眠りについたのは夜中の2時過ぎ。
壁掛け時計に目をやると、まだ6時を回ったところだった。


それにしてもうるさい……。


音の原因を確認するため、まだ朦朧とする意識ながら外に出ると、庭先で紫音先輩、武志、柏木先輩の3人が真っ青な空を見上げていた。


音の正体はプロペラの二つ付いた鉄の塊(かたまり)。かなり近くを低空飛行している。


「ヘリコプター?」


「起きたか!」


私に気付いた武志が振り返る。


「自衛隊のヘリだ!」


武志にしては珍しく少し興奮した様子。


武志……そんなにヘリコプターが好きだったんだ。


「でも、ちょっとうるさくない?」


「寝ぼけてるのか。ヘリだぞヘリ!」


「それは、見ればわかるけど……」


「救助だよ! 救助!」


「あっ!」


一気に目が覚めた。ぼんやりとしていた脳が高速で情報を処理し始める。


「助けがきたの!?」


「この状況で大型輸送用のヘリだ。まず間違いない」


「でも、どこに降りるの?」


大きなヘリが着陸できる場所は限られてくる。
それに、あれだけの轟音。下手に降りれば、たちまちゾンビに囲まれてしまうのは明白だ。
救助だというなら、大型ヘリが離着陸できる平らで広いスペースがあって、尚且つゾンビを寄せ付けない閉鎖された空間が必要。

< 83 / 135 >

この作品をシェア

pagetop