Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「おそらく、陸上競技場ね」
と、紫音先輩が私の疑問に答えながら振り返った。
だんだんと遠ざかっていくヘリは、確かにそちらの方角へと向かっている。
競技場は、我が校で毎年恒例のマラソン大会で使っているから位置はわかる。
ここからそんなに遠くはない。
「行きましょう! 距離も近いし、うまくいけばそのまま避難できる。無理だったとしても、浦高橋へは多少の遠回りで済むからリスクも少ない」
「そうね。みんなに話ましょう」
武志の熱のこもった言葉に紫音先輩も同意し、2人は足早に家へと戻っていった。
柏木先輩は未だ空を見上げたまま。
腰のベルトには、道場で持っていた日本刀が差してある。
私が夜のことを思い出して、なんて話しかけようか迷っていると、
「おはよう」
先輩はいつも通りのポーカーフェイスだった。
「お、おはようございます」
「僕らも戻ろう」
「は、はい」
あっさりと歩き出した先輩の背中に、昨日見た寂しさは微塵もなかった。
その無表情をなぜか少し残念に思う自分はいたけど、どちらにしろ今はそれどころではない。
私も先輩の後を追って家へと入った。