Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~

ゆがけを手に付け、矢筒を背負って準備していると、小百合が近づいてくる。


「ねえ、あおいちゃん」


なんだろう? ゾンビがいるわけでもないのに、いやに小声だ。


「……あのね」


それに胸の前で指と指を絡めて、妙にもじもじとしている。


「私ね、一晩考えたの」


「うん?」


「澪ちゃんが昨日言ってたでしょ。……後悔したくないって」


この態度……。
なにを言いたいのか、なんとなく予想がついてしまう。


「だから、わたし……、無事に避難出来たら告白しようと思うの。……純也、くんに」


やっぱり思った通りの言葉だった。


「一応、あおいちゃんには言っておこうと思って……」


どうして? とは聞かなかった。
その答えも分かってしまったから。


きっと小百合は、私が純也のことを好きなんだと思っているから、コソコソしたくないんだ。
別に私に断る必要なんてないけど、わざわざ気にかけてくれたのは嬉しかった。


私も自分の気持ちだけは、はっきりせておかなければいけないのかもしれない。


小百合は私の返事を待たずに、照れくさそうに「じゃあ、先行くね」とそそくさと部屋を出て行く。


あれ? 


そこで、とあることに気が付いた。

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